売上を上げたい時、新規顧客獲得は欠かせません。顧客数が増えれば、そこから上がる売上も増やすことができるでしょう。
ですが、新規顧客獲得のための集客には非常に広告費や労力がかかりますし、いつでも思ったように集客できるわけではありません。
そんな時、他に売上を上げる方法として活用できるのが、アップセルとクロスセルです。
アップセルとクロスセルは、主に既存顧客に対するアプローチで、この2つの販売手法を上手に利用できれば、顧客単価を大きく上げることができるでしょう。
ただし、やり方を間違えるとただの「押しつけ」になり顧客離れにつながります。
ここではアップセル・クロスセルについて事例を交えながら、注意点まで分かりやすく解説します。
アップセルとは
アップセルとは、ユーザーが見ている商品より価格が高い商品を紹介することで、購入金額のアップを促すマーケティング用語です。
靴やバッグなどを買う際に「こちらの商品もおすすめですよ」と見ている商品より魅力的な商品をすすめられると、「どうせ買うなら良い物を買おう」となり、予算より高額な買い物をしてしまうのと同じ原理です。
たとえば、大切な人へのギフトや自分へのご褒美では、財布の紐が緩んでしまった経験のある方は多いのではないでしょうか。
アップセルの例
身近なアップセルの方法を、マクドナルドで例えてみましょう。
カウンターで注文をした時に、「今なら+50円でLサイズにできますがいかがでしょうか?」と言われたことはないでしょうか?
この店員の一言こそ、まさにアップセルなのです。
また、クレジットカード会社は頻繁にアップセルを実施しています。クレジットカードにはランクがあり、取引実績のある顧客に対して少しずつランクの高いカードへの切り替えを勧めてきます。たとえば、年会費が1万円以上するゴールドカードやプラチナカード、ブラックカードへのランクアップによって、顧客の満足度と単価アップを図っています。
他にも、家電量販店でアップセルの実例をよく目にします。たとえば、パソコンを買いに来たとして、想定していた機種よりもスペックのよい=価格の高いものを勧めるものです。「画像処理をスムーズに行うためには、これぐらいのメモリーが必要です」と説得することで、アップセルを行います。
クロスセルとは
クロスセルとは、ユーザーが見ている商品に関連する商品を紹介することで同時に購入する商品数のアップを促すマーケティング用語です。
たとえば、お店でスーツを買う時に「このネクタイを合わせるとステキですよ」と接客されると、「確かに、このスーツに合うネクタイは持ってなかったな」と思い、買ってしまうのと同じ原理です。
クロスセルの例
それではクロスセルの方法を、マクドナルドで例えてみるとどうなるでしょう。
期間限定のハンバーガーとコーラを注文したとします。すると店員さんはこう言います。
「ご一緒にポテトはいかがですか?」
この一言が、クロスセルなのです。
靴屋に革靴を購入しにきた顧客に対して、シュークリームやブラシ、防水スプレーなどといったお手入れ用グッズを勧めることがありますが、こういった売り方も典型的なクロスセルと言えます。
また、自動車販売業界では、購入を決めたタイミングでオプションやサポートの案内を行います。ここでのポイントは、メインの商品価格より低価格なものをすすめることです。
自動車という高額商品を買うとき、人は慎重になります。しかし一度買うと決めると緊張の糸が一気にとけ、気分が高揚した状態になります。この段階でドライブレコーダーやカーナビなどの低価格な商品(メインの自動車に比べれば低価格)をすすめられると、さっきまでの慎重さがウソだったかのように買ってしまうのです。
アップセル・クロスセルの注意点
なかなか新規見込み客を大量に集客できない場合に、アップセルやクロスセルのような手法は企業にとって魅力的に映るものです。
しかし販売側にとって大きなメリットがある一方で、顧客側からすると強引に感じてしまうこともあります。
顧客への押し付け感が強いとうまくいかないどころか、かえって不信感を招くことになってしまうのです。
顧客視点を忘れない
ポイントは、あくまで顧客視点を忘れないことです。
つい売る側の都合で考えがちになりますが、顧客視点を常に頭に置いて施策を練る必要があります。もし、今より価格の高い商品を購入したら、顧客にどのようなメリットがあるのか。関連商品を購入したら、もとの商品と組み合わせることでどのようなメリットがあるのか。
こういった事を顧客に分かりやすく提示することで、アップセルやクロスセルの成功率は上げられます。
また、商品だけでなく企業自体に信頼がある場合も成功しやすいと言えます。長期的な信頼関係を結ぶことで、「あの企業が出した製品なのだから心配ない」と思ってもらえればしめたもの。
自社のファンを作ることで、アップセルやクロスセルを仕掛けやすくなります。
タイミングを見極める
アップセルを行うタイミングを見極めることも、成功のためのポイントです。
お客様は最初に紹介した商品やサービスを検討しています。
そのタイミングで別のものを紹介しても、最初に紹介されたものとの違いが分からず、頭が混乱し、考えること(検討すること)をやめてしまう恐れがあるのです。
コミュニケーションをとったり、相手の表情を見たりしながら、お客様に合わせてアップセルを行います。
押し売りをしない
アップセルは、商品やサービスを提供する企業側の目線しか持っていないと、押し売りと判断されてしまう可能性があります。
押し売りを防ぐためには、お客様がどのようなものを求めているのかを読み取ることが大事です。
そして、グレードを上げたものが要求に応えているのかを考える必要があります。
Webサイトやネットショップでも、顧客情報から入念に分析し、一人ひとりのユーザーに合った商品を紹介することが大切です。
かけ離れたものを紹介しない
アップセルやクロスセルでは、お客様が希望している商品やサービスと同じものや関連したものを勧めます。
購入を検討している製品と関係のないものを勧めてしまうと、強引な印象を与えてしまいます。
他に勧めたいものがあっても、顧客の購入希望商品のイメージから脱線しないように心がけましょう。
重要なのは、お客様が満足するかです。
あくまでも、お客様のニーズがあったうえでの戦略ということを忘れないでください。
アップセル・クロスセルを自動化
最近のECサイトは、過去の購入履歴や閲覧履歴に基づいておすすめ商品を表示しています。
また、購入後に「こちらの商品を購入した方は、一緒にこちらの商品を購入しています」と画面に表示するのも、クロスセルと言えるでしょう。
実店舗ならば、スタッフが接客している中で好みを感じ取り、そのお客様の好みにあった商品を提案できます。
こういったやり取りによって、買うつもりのなかった人が購入したり、予定の金額以上の買物をしたりします。これらは全てスタッフによる接客によって、お客様の好みにあった商品を提案したからです。
ECサイトで同じような仕組みを取り入れるられるのがレコメンド機能です。ユーザーの好みに応じて商品を表示するので、ユーザーごとに違う商品を提案できます。
ユーザーの欲しいものを欲しいタイミングでおすすめできるので、ユーザーからすれば「このECサイトは自分の好みにあっている」と感じるので、長く利用してくれるようになるでしょう。
まとめ
売上を上げる方法は、新規集客だけではありません。
アップセルとは、より高額な商品を勧めること、クロスセルとは関連商品を勧めることで、どちらも顧客単価を上げることで、売上を上げる手法の一つです。
自分のビジネスでクロスセルやアップセルができないか、この機会にぜひ考えてみてください。