みなさんは商品やサービスを考えた時に、その目的やコンセプトはもちろんですが、それらを誰に対して提供するのか意識していますか?

ペルソナやターゲットを設定することは、商品やサービスを買っていただくお客様を決めることであり、ブランディングやマーケティングはもちろん、集客や販促などを考える起点となります。
そこを意識せず、万人向けを狙ったものはコンセプトや伝えたいメッセージが薄れ、ブランディングであれマーケティングであれ、予算を投入したのに成果が出せないままとなってしまうでしょう。

そしてターゲティング戦略を間違えれば、その後のプロセスもすべて間違ったものとなります。そうならないためにおすすめしたいのが、ペルソナの設定です。
ペルソナを作成して顧客像を明確にすることはマーケティング活動において必須と言われますが、同じような言葉で「ターゲット」があります。

では「ペルソナ」と「ターゲット」は何が違うのでしょうか。また、どのように使い分けているのでしょうか。

ここではペルソナとターゲットの違いをしっかり理解して、ペルソナを設定するメリットと、どのように活用すればいいかを解説します。

ターゲットとペルソナの違いは?

ターゲットとペルソナの違いを一言で説明すると、設定の詳細さです。
具体例を挙げてみていきましょう。

ターゲットとは

従来のマーケティングでは、サービスを利用するであろうユーザーを、年代、男女、学歴、年収、既婚未婚などの属性でセグメンテーション(似たようなグループに分類)し、ターゲットを設定するのが一般的でした。
例えば「40代~50代の男性会社員」「東京在住で一人暮らしをしている女子大学生」などです。
ターゲットを絞ることで、ユーザーの特性やニーズを汲み取り、狙ったマーケットに対してコストをかけることが有効といわれていました。

ところが、近年のライフスタイルの多様化により、そうした分類だけでは顧客のニーズが予測できなくなってしまいました。

ここで登場したのが、ペルソナです。

ペルソナとは

市場が成熟し、生活者のニーズも多様になった現代では、ユーザーの潜在的な欲求を理解するために、より詳細な顧客像を基にしたマーケティングが求められるようになりました。

サービスを使う、もしくは今後サービス使って欲しい最も重要な顧客のモデルとして、「一人の架空の人物」を想定し、そのプロフィールを趣味や価値観、行動パターンなどを、詳細に設定していきます。
これをペルソナを設定する、といいます。

例えば、新しく開発された商品の利用者を「関西に住む事務職の30代未婚女性」とターゲティングしても、思い描くユーザー像は、担当者によってバラバラになってしまいます。
そこで、Aさんという一人のペルソナを設定することで、具体的な顧客像をより理解できるようになるのです。

例で詳しく見てみましょう。

●ターゲット
25~35歳、女性、主婦、アウトドア好き
● ペルソナ
斉藤優香
32歳
女性
専業主婦
都内に住む
夫(33歳)、長女(5歳)、次女(3歳)の4人家族
夫は会社員で営業職のため人付き合いが多く、土日もフットサルやキャンプの誘いが多い
家族で参加したキャンプが楽しかったため、アウトドア、DIYが趣味になる
Instagramでアウトドア、DIY系のアカウントを日頃チェックしている
自身もアウトドアブログを開設して少ないながら収入を得ている
次女(3歳)が保育園に慣れてきたら働きに出たいと考えている
友人とのやり取りではLINEを使用することが多い

このように、ターゲットは大きな属性で設定するのに対し、ペルソナはリアルな人物像を設定していきます。

ペルソナを設定するメリット

では、ペルソナを設定することでどのようなメリットが生まれるのでしょうか。

具体的な顧客のニーズを理解できる

データや多くの情報をもとに設定されたペルソナは、1人の人格のようなものです。
このペルソナのニーズを満たすようなサービスを考えることで、その後ろにいる多くのユーザーのニーズを満たすことにつながります。
ユーザーが求めるものを理解し、サービスに反映すれば、サービスの完成度を高めることにもつながるのです。

共通した人物像を形成することで効率よく業務を進行できる

しっかりとした人物像がないままでは関係者の間で、認識のズレから無駄な作業が発生したり、それによってスケジュールが遅れるといった事がでてくるかもしれません。
異なる分野の関係者ともペルソナという共通の人物像を共有することで、認識のズレを無くし、効率よく業務を進行することができます。

ターゲットに刺さるアプローチができるようになり、時間、コストの削減ができる

ペルソナを設定することで ユーザー像が明確になれば、今後どうしていけばいいのかという方針もはっきりしてきます。
方向性が明確になれば、本当に効果的なアイデアだけに絞ることができるため、作業時間、実施に関わるコストなどの削減につながるのです。

ペルソナの設定方法と注意点

現在のマーケティングに有効な手段であるペルソナの設定ですが、精度が低ければ効果的ではありません。
ここでは、ペルソナを作成・活用する上で注意すべきポイントをご紹介します。

先入観や思い込みを反映しないこと

ベルソナを作成する上で注意したいのが、個人的な先入観や思い込みです。明確な数字で表すことができないベルソナ作成では、元々持っているイメージやそうであって欲しいという希望をつい反映してしまいがちです。

ここで担当者の希望やイメージを反映してしまっては、実際に使用する人物像とは大きなズレが生じてしまいます。
年齢・性別・学歴や収入・住んでいる場所・家族構成などの外面的な要素から、趣味や考え方、休日の行動パターンや好きなブランド、インターネットやSNSの利用状況などの内面的な要素を細かく設定します。

正確なペルソナを作成するためにも、SNSやインターネット上の口コミなど、外部からのデータを取り入れることも重要です。
また、インタビューやオリエン形式で、直接ユーザーから意見を聞くという方法も有効です。

関係者全員がイメージできるようにする

いくらペルソナを設定しても、作成者以外の関係者が同じイメージを持てなければ作成した意味がありません。

ペルソナ作成の一番の目的は、代表的なユーザーの人物像を担当者間で共有することです。

そのためには、ペルソナは誰でもイメージできる人物像である必要があります。
作成者は写真やグラフを使って、パッと見た瞬間に雰囲気をつかめる様にする工夫も必要です。

結果をまとめ、必要な情報に絞る

ペルソナは自社のサービスを使う、代表的な一人の架空の人物を作成するものです。
大量にある情報を1人に集約することはなかなか難しいものです。場合によっては、必要な情報だけにおもいきって絞る必要があります。

定期的に見直しする

ペルソナは作ったら終わりではありません。ペルソナを設定しても、実際に運営していると想定と異なる事実がでてきます。
それは、ペルソナがリアルであればあるほど、ユーザーの置かれている環境や情報も常に変化しているからです。

作成したらそのまま使い続けるのではなく、 ユーザーの動向に目を向け、定期的に見直し、実際に利用しているユーザーに近づけていってください。

ペルソナ活用のコツ

設定したペルソナは、関係者全員で共有し、今後はそのペルソナのことを名前で呼びましょう。
「斉藤さんならこっちのほうを選ぶはず」
「斉藤さんが喜ぶのはこのタイミング」
「斉藤さんはこの機能は使わない」

何かを考えるときは、ペルソナを基準に考え、感情移入することで本当のユーザー目線に立てるようになります。
また、活用方法を考えた上でペルソナの設定をすると、ペルソナに必要な情報がわかり、インタビューや調査するべき項目が考えやすくなります。

まとめ

昔は、良い商品を作っていれば売れていたという時代でしたが、今は市場が成熟しニーズの多様化が進み、特徴のない中途半端な商品は見向きもされません。

このような環境の中で、マーケティングを成功に導くためには、ユーザーの心理を理解しなければいけません。
自社の代表的な顧客として ペルソナを設定し活用することで、その後ろにいる多くの顧客が求めるものを提供できます。

ペルソナを設定することは簡単ではありませんが、ユーザーのニーズが複雑化・曖昧化している今、ぜひ活用して欲しいとおもいます。
この機会に、自社のペルソナ設定を行ってみてはいかがでしょうか。